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はなやぐ一瞬
木村

 山の紅葉は早く、9月下旬に見頃を迎え、良い期間は数日~1週間ほどです。その間に休日は1日か2日、その日に晴天に恵まれないと、次のチャンスはまた1年後になります。昨年、9月末の日曜が晴天に恵まれ、紅葉の雷鳥沢を訪れる機会がありましたが、前日の土曜が最盛期、しかも「雲ひとつない快晴」で、日曜はすでに「やや見頃過ぎ」な状態でした。今年は穂高のベースキャンプ地である涸沢へ。通常は丸2日、年配の方であれば2泊3日あれば安心して行ける場所です。穂高へ向かう人のキャンプ地ですので上部には鎖場もたくさんありますが、涸沢までは危険箇所もほとんどない、ただ、上高地バスターミナルから16km、歩いて歩いて歩いて歩く道のりは、脚がどこまで耐えられるか。それでもこの目で見たい涸沢の紅葉です(笑)
 
 近隣の山小屋は例年、9月20日過ぎからは予約開始即満室状態、9月最終の週末はテント1000張り、小屋は毛布1枚に3~4人の激混みです。今回の私は諸事情あって10月初め。「それだともう終わってますよ」。。。偶然、今年は夏の暑さが長く続いたこともあり遅れている模様。あとは天気と体調次第、そして台風。山用の予報、高層・低層の各天気図、JTWC、周囲の地形などから「すっきりしない曇り、ギリギリ雨が降るかどうかといったところ。もしかしたら山は見えている可能性もあり」と、詳しい友人、達人たちのおかげで、きわめて詳細にわたり各種情報が手に入りました。「もともとピークには間に合わないはずだったし、行くだけ行ってみよう」と、深夜に出発しました。
 
 その前日も、同じ予報ながら晴れ間があったようです。今日も同じように太陽が出てくれないかな、、運よく始発のバスに乗れて5時45分、登山届も提出して濃霧の河童橋を出発。十数kmの平坦路は朝陽が差し、雲はかかっているものの山も見え、順調に進みました。残り2.4km地点からいよいよ登り。私よりひと回り年上の登山暦長い大学教授は「それほど大変ではないよ」とおっしゃるこの急登、いったい何千段登るのかと思うほど登って登って登って登る(笑)。見頃が1週遅れたことに対応できた方々で登山道は渋滞気味でしたが、その渋滞のおかげで脚を休めながら最後の登り。まるで万里の長城かと思う石段を登り終えて目にする紅葉はほぼ最高潮。カールが見え始めた頃には雲も少なくなり、青空と陽差しが降り注ぎました。

J-PRESS 2019年 11月号