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私は『ホエールウオッチング』で考えた
石黒

 過日休暇を利用し沖縄県座間味島(人口500余人)訪問を計画、目的は冬期3ヶ月間のみ催行される『ホエールウオッチング』。この時期特有の季節風により沖縄近海の東シナ海は連日の時化(しけ)。沖縄本島から座間味島へ向かうフェリー・高速船とも欠航続きの毎日、先行きが危ぶまれる。
 
 座間味島に向かう朝8時過ぎ、『座間味ホエールウオッチング協会』から電話。「島へのフェリー・高速船は動くようですがこちらの海上は時化ており、ウオッチングは催行できるかどうかは分かりません」。(中略)多少の波はあったがフェリーは定刻に到着、その足で協会に向かう、日焼けした女性スタッフが「すみません催行中止です」。
 
 那覇港(泊港)で買求めた高カロリーの『うちなー弁当』を、小雨煙るフェリー岸壁で頬張る。ふと眼をやると『村営バス乗場』の看板、島内3集落へ循環バスが、気付けば3路線すべてを制覇するのに一時間も掛からず。時計はまだ午後3時、最も大きい集落と言っても徒歩で一周するのに一時間もあれば十分。理髪店、雑貨屋、食料品店…
 
 翌朝8時小雨。島内放送が「座間味村です、本日のフェリー・高速船、全便欠航です」、1日延泊。再度徒歩で集落を散策、野菜を並べるおばぁ、虫捕網を手にした少年、彷徨う観光客。一軒しか無いcafe、男女2組が静かに流れる時間に身を任せ。「どちらからですか?」「目黒から、今はパリに住んでいます」「富山からです」「実家は金沢の有松に」、傍の男性が微笑む。
 
 快晴の朝。3日目にして初めて眼にする『座間味ブルー』。レンタバイクで展望台や名所に立ち寄り島内一周。午後2時発のフェリーに乗込む。時化に祟られた二日間、船内では顔見知りになった人々との会話が弾む。cafeで出会ったもう一人の20代の女性、「私、射水市出身なんですよ、もうしばらく沖縄の島々を周るつもりです」。残念ながらクジラには会えなかったが…

J-PRESS 2017年 5月号