城西セミナー城西セミナー

タは単純のタ
石川

 夏休み、海や山へ遊びに行く人も多いと思います。
 
 登山やキャンプなどで山間地の道路を通っていると、人里離れたところに数件の家がぽつんと建っていて驚くことがあります。こんなところに住んでいたら、通勤通学や日常の買い物も不便だろうな、と考えるのは大きなお世話なのかもしれませんけど。
 
 すべての住民が街の中心部に集まって暮らせば、みんな便利に暮らせますし、道路や上下水道や交通機関や各種公共の設備にかけるお金が少なくてすむので、税金も安くできていいこと尽くめのはずです。
 
 でも、話はそう単純にはいきません。住んでいる土地に愛着があるなど、理屈だけでは解決できない事情で不便なところに住み続ける人もいて、山奥にある住民数十人の集落のために数十億円かけて立派な道路を建設したりするのは全国で見られる光景です。
 
 夏休みの宿題は早めに終わらせようと言われます。自分も先日の保護者会で言いました。
 
 でも、口で言うほど単純じゃないよ、という人も多いでしょう。部活で忙しい、塾の夏期講習もある、何より暑さでやる気が起きない。いろいろな理由で後回しになり、いつの間にかお盆、ふと気づくと8月下旬。やっつけ仕事で、なんとか提出日に滑り込みセーフ。
 
 先日、参議院の定数を10増やして10減らす公職選挙法の改正案が国会で可決されました。3年生の人、入試に出るかもしれませんよ。
 
 1票の価値を平等に近づけるための法律改正ですが、それでも3倍の格差が残ります。各都道府県に最低ひとりの議席をと考えれば、議員総数を増やすのが唯一の解決策です。個人的には全国を1区にすれば、完璧に平等でまるっと解決なのにと思っています。
 
 きっと「何を言ってるんだ、そんな単純で夢みたいな理想通りには現実は動かない」と却下されるでしょう。
 
 でも、「不戦の態度を貫けば、誰も攻めてこないし自衛隊も不要」のような理想論に比べれば、全国を1区にする選挙制度改正なんて、らくらく実現できそうな気がしませんか?
 
 放浪の詩人も言っています。「あんまり大袈裟に考えすぎない様にしろよ。何でも大きくしすぎちゃ駄目だぜ」と。
 
 とりあえず、大袈裟に考えず、できることから手を付けて、夏休みの宿題を早めに終わらせましょうか。

J-PRESS 2015年 8月号