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私は「東京」で考えた
石黒

 所属する公益社団法人の総会に出席するため、羽田行07:50の航空機に乗込む。年5、6回の「参勤交代」は数少ない休日を食潰し、オヤジの体力と英気を奪う。到着ロビーを出て百数十歩、都心へのモノレールは4分おきに現れる。各種団体の総会、セミナー等は政令指定都市で行われるのが慣例。出席率(人気)が高いランキング上位は札幌、福岡、仙台、京都とのこと。東京は人気が低く、怪訝な表情で「空いているかな!?」とスケジュールの確認をする輩も。「美味しい物あったっけ」「コンクリートジャングルに吹く熱風が」「駅の人込だけは勘弁して」。
 
 「第8号議案をご承認の方は挙手を」「賛成多数です」、二時間を超える総会が終了。会場を後にしJR駅直結のホテルにチェックイン。最近10年間50数回の東京出張を省みれば会議オンリー。物見遊山、知人との懇親、グルメ探訪は皆無。ここで一念発起!「東京スカイツリー、浅草・上野・下町散歩」、赤面もののガイドブックを購入。新素材を用いたシューズ&ウエアで武装、コンパクトカメラも忘れない。
 
 いざ出陣!ホテルの地下三階が地下鉄駅、一区間でスカイツリーの最寄り駅に到着。人、人、そしてまた人、全国47都道府県から老若男女が大集合。「午後6時半の入場券購入の整理券をこの列でお配りしています」。不快指数はマックス、シャッター音、子供の泣声が飛び交う黄昏時。「隅田川水上バスの乗り場は?」「私達そこから来たんだけど電車で一駅」。歩いてみた、戦後の趣を色濃く残す情景が広がる。
 
 桜の名所:隅田川を小舟で遊覧、ガイドの声は上の空。下町の景色、電車が鉄橋をガタンゴトンゴトン。著名なビル群、スカイツリーそして大都会東京が川面に飲込まれて行く。陸に上がると小さな広場から懐かしいメロディー、浅草を愛する近隣住人が集まる。70代前半から80代後半、手拍子に飽き足らず身体全体で感情を表現。アンニュイな時間を反芻しつつホテルに。
 
 翌日、動物園、美術館で名を馳せる上野公園を訪問、不忍池(しのばずのいけ)に向う。手入れの行き届いた散策路を抜けると、「白鳥ボート」の大群が。将棋盤を囲む老人達、聴衆の居ないバイオリン奏者、ベンチで新聞紙面に食入る初老の男性、無数の鳩に餌を与える老婆。「この光景は自分の近未来の姿かも?」、自問自答の帰り道、油蝉の大合唱が梅雨空に鳴り響く。小松行最終フライトまであと90分。

J-PRESS 2013年 7月号