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私は「宅配便」で考えた
石黒

 12月24日(土)クリスマスイブ、朝刊各紙は「記録的な豪雪、高岡市74cm」「富山空港、視界不良のため6便が欠航」「生鮮食品、品薄状態続く」の文字で埋め尽くされた。積雪により陸路は寸断、関西・関東・中京方面からの食料品、生活物資の運送にも大幅な遅延が発生。宅配便も例外でなく、北海道のAおばさんが送ってくれた自家製豚丼のタレも2日遅れで我家に到着。待ちに待った「豚丼を囲むホワイトクリスマス」が盛大に開催された。
 
 豚丼。ここ数年、大手牛丼チェーンが米国産牛肉の輸入再開までのつなぎとしてメニューに載せたところ、「たれ極まる。うまさ極まる」のコピーと共に看板商品に。テレビショッピングや大手百貨店でも人気急上昇、関東圏でも豚丼が「ジンギスカン」並に認知される日も遠くない!? 本家(?)と思われる北海道の有名店P、Tでは、氷点下5度の外気温をものともしない旅行者が、換気扇から出る薫りに元気付けられガイドブック片手に行列を作る。
 
 宅配便で届いたタレ、製作者は北海道在住66歳になるAおばさん。このコラムを書くにあたって門外不出のレシピを聞き出す。「先生、電話じゃ無理、FAXするから」、材料は次のとおり。
・醤油・氷砂糖・黒砂糖・ザラメ・蜂蜜・水飴・玉葱・昆布(詳細は電話にて)。
 
 20数前私が大学生だった時、Aおばさんのお子さんの家庭教師をした縁で今でもお付き合いがある。家庭教師はエンドレス、A家から始まり親戚のB家のお子さんも。一族だけで5人を指導、バイト代は総額数百万円を下らない。当時は学生=貧乏=空腹が定説。午後10時、授業が終わると貧乏学生が体験し難い豪華な夕食が待っている。Aおばさんお奨めの▲ビールから始まり、途中からご主人も同席。終了は11時、夜食のお土産付き。
 
 10月初旬、Bおばさんより電話、「まだ足がしっかりしているうちに、石黒先生の顔を見に北陸に行きたいってAおばさんやCおばさん、娘のD子が言ってるんだけど都合はどうだい?」。旅館の手配、北陸名所巡りのルーティングに仕事もそっちのけ。11月●日夕方、「おばさん4人北陸湯煙ツアー」は富山空港を振出しに、兼六園、金沢城、武家屋敷、千里浜、能登島、瑞龍寺、五箇山と巡り、全走行距離430km。
 
 11月■日早朝、札幌便に合わせ富山空港へ向かう。「内地(本州)じゃ、柿がなるってかい」「黒い瓦屋根の家ばっかりでないかい」「旅館の庭、なまらきれいだったっしょ」、元気な声が車中に響く。空港に到着、富山の名産品を漁る4人を搭乗口まで案内する。「お土産ならボクが良い物選んで宅配便で送りますから」、20数年前の恩返しがやっと出来た4日間であった。

J-PRESS 2006年 1月号