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ナはナビのナ
石川

 7月中旬のある休日、遅めの朝食を食べながら、突然軽井沢へ行ってみたくなる。思い立ったが吉日とばかり、すぐに出発。一路東へと車を走らせる。
 
 初めての軽井沢は、あいにくの霧。道も分からず、地図を片手に難儀する。霧の中をしばし散策。野沢菜の漬物と釜飯弁当を購入し、今度は晴れた日に来ようと心に誓い帰路につく。
 
 2週間後、友人たちと富山・長野県境にある唐松岳へ登山。乗せてもらった車はカーナビを装備。最新型ではないが、それでも必要充分な性能。初めての土地でも迷うことなく目的地に着き、少なからず感動する。
 
 一連の経験から、カーナビ購入を決意。やはり思い立ったが吉日ということで、8月初旬カーナビ購入。
 
 以前から友人知人に「あれは便利!」「そんなもの使うと道を覚えなくなる」などの賛否両論いろいろな意見を聞いていたが、実際のところは、自分で使ってみないと分からない。
 
 ひと月半使ってみて、「あれは便利!」と言っていた友人の言葉を実感。道を調べるのであれば紙の地図のほうが便利なぐらいだが、今自分がどこにいるか分からないと紙の地図はほとんど役に立たない。その点カーナビは、天からの導きで現在地が常に分かる。これが何よりもありがたい。
 
 「道を覚えなくなる」という意見は幸い杞憂だった。カーナビに頼り切らず補助として使うかぎり、道を覚えたり地理を把握するのは今までと変わらない。ここ2週間ほどカーナビのない車に乗っているが、実際それほど困っていない。
 
 カーナビに頼りきってしまえば確かに楽だが、カーナビ無しで運転できなくなるようでは困る。運転の主役はカーナビではなく自分。だからこそ、運転の楽しさも自分のものになる。
 
 そう考えると、学習塾もカーナビのようなものかもしれないな、と思う。正解へたどり着く道筋は示すが、代わりに勉強したり試験を受けたりするわけではない。みんな一人ひとりが主役。
 
 道しるべとなる衛星がいるであろう空を見上げながら、自分も日々進化するカーナビに負けず、正確にわかりやすく案内できるように、がんばらねばと思った。

J-PRESS 2003年 10月号