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電気羊の夢
石川

 先日「リアル ドリーム ドラえもん プロジェクト」が発表された。2010年までにドラえもんを製造・販売するという計画。プロジェクトを提唱したのは、玩具メーカのバンダイ。
 
 プロジェクトは、3段階で進む。
 第一段階は、声に反応してタイヤで動き回る小ドラえもん(身長25cm)を今秋発売。声に反応するが、個人を識別するほどの能力はない。
 第二段階では、個々人をを区別し周りの状況を理解できる能力を持った、中ドラえもん(同70cm)を2006年に発売。
 そして最終段階では、完全二足歩行をし、自分で考え行動することができるドラえもん(同129.3cm!)を発売という計画。
 わずか8年後。しかし技術の進歩を考えれば8年もある。今年中学に入学した人たちが成人するころには、ドラえもんが街を歩く風景が現実のものになっているかもしれない。
 もしかしたら、2112年9月3日までには、四次元ポケットさえも……
 
 世界の工業用ロボットの半数は日本で稼動しているらしい。ちなみにアメリカは1割程度。どうして日本ではこれほどロボットが受け入れられるのだろうか。
 
 日本人にとってロボットがもつイメージは「友達」「仲間」「人につくす存在」といったプラスのイメージが強い。昔から、からくり人形などの人型機械をつくり、あらゆるものに命が宿ると考える神道的思想ゆえか。
 そして、アトムがこれらの良いイメージを決定的なものにした。強く優しい心を持ち、人間に尽くしてくれる仲間。 AIBOのようなロボットペットもこういった背景があったからこそ生まれたのだろう。
 
 一方、欧米ではターミネータに象徴されるような「人間に敵対するもの」ととらえる人が多い。ロボットは人類に代わって世界を支配しようとする危険な存在である、と。もしかすると、ヒトが神をまねてヒトに似たものを生み出すことに禁忌を感じるのだろうか。
 
 20世紀は自動車の発達が世界を大きく変えた。21世紀はロボット技術の発達が世界を大きく変えていくに違いない。そのときロボットに親しんでいる日本人の果たす役割は決して小さくないはずだ。
 
 2003年4月7日にアトムが誕生することはないだろうが、近い将来、生活の中にロボットがいることを珍しいとは感じない世の中がやってくる。
 
 
 そして、現実は手塚・藤子先生の夢に追いつく。

J-PRESS 2002年 8月号