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みかんの作法
深田

 正月にこたつで暖まりながら食べるものといえば、やはりみかんです。
 
 あなたは、みかんをどのように食べますか。皮のまま丸ごと食べるという人はまずいないはずです。それでは皮はどのようにむいていますか。
 普通、みかんというのは、ヘソのほうからむきますよね。
 ヘソというのは、みかんの下にあるヘソのことです。ときどき、デベソなんていうのもあって、子供時代には、なんとなくうれしかった記憶があります。
 そのヘソに指を突っ込んで、そのままツツツツと皮をむいていく。
 これが当たり前だと思っていたのですが、最近私のまわりで逆に、ヘタのほうからむく人をけっこう見かけます。
 でも、この方法だと、指を皮に突っ込みにくい。しかもたいてい皮がバラバラになってしまう。
 みかんの食べ方のエチケットとして、ヘソのほうからむいて皮はきちんとたたむというように教わったと思うのですが、ヘタからむくのには理由があるらしいのです。
 
 「こうやってむくと、皮とスジがいっしょにきれいにむけるの。みかんは幹からあのスジを通って栄養が伝わって来る。スジは人間で言うと血管みたいなもので、先へ行くほど細いんだ。ヘタのあたりのほうがスジはしっかりしていて、ヘタのほうからむいたほうがスジもとりやすいんだ。」
 そう言われて、みかんをむいて観察してみると、たしかにヘソのほうに向けてスジは細くなっているようです。
 いったいどちらが正しいのでしょうか。決して人生が左右されるような大問題ではありませんが、気にかかっていました。
 
 そんなことを友人と話していて、「いい方法がある」と教えてくれたのが次のやり方です。
 まず、みかんをヘソのほうからヘタに向けて、それぞれ皮をつけたまま四つに割る。このとき、皮はヘタの部分でつながっている状態にしておく。そして、割れた下のほうから袋を持ち上げて皮から取り外していく。
 こうすれば皮もバラバラにならず、スジも取れるというわけです。これぞパーフェクトともいえるみかんのむき方だと感じました。なんでもこれは茶道で行われている方法だそうです。
 茶道の奥深さに感動しつつ、みかんに関するもうひとつの疑問について尋ねてみました。
 「みかんの袋は飲み込むべきなのか、それとも吐き出すべきなのか。」
 答えはこうでした。
 「茶道では、茶席でいただくお菓子は器に残さない決まりになっている。ただ、みかんの袋は食べてもいいし、残すときには皮にきちんと包んで持ち帰ればいい。」
 結局、袋は飲んでも、出してもいいらしいのです。
 なんとなくあいまいなままの私の疑問に、確信を持って食べるべきなのか、食べざるべきなのか、答えていただける方はご一報願います。

J-PRESS 2002年 1月号