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メダル? それとも・・・
木村

 みなさんにとって、オリンピックで印象に残ったことは何ですか。うちの親は開幕1週間も前から、「ニッポンの水泳は強い!」「サッカー、メダルとれるかもしれんぞ」と、テレビで解説され尽くしているようなことを、「どうや、知らんやろ」と言わんばかりに力説していました。私はといえば、開会式でどんなエンターテインメントを披露してくれるのかに興味があり、ともあれオリンピックの話題は尽きませんでした。4年前のアトランタの開会式では、アメリカ選手の入場のときに特別の音楽が流れ、彼らの「列も行進もあったもんじゃない」入場行進に圧倒されたことをおぼえています。2年前の長野の開会式で物足りなさを感じていると、「冬はこんなもんや。わりと小さい町で、地味にやることが多いから・・・」と聞かされました。ところが閉会式では一転、 2002年のソルトレイクシティーの華やかな予告にまた圧倒されました。
 
 競技では、アメリカの野球やバスケ、ブラジルのサッカーなど、超一流のものが見られます。いや、見られると思っていたのに、「アメリカの野球は、メジャーの選手は出んそうや」、また親の解説が加わりました。「なんでや? アイスホッケーもバスケもドリームチームで出るがに。でも、これで日本も勝てるやろ」。うんうんと肯きながら、「それでもアメリカが勝つかもね、王者にはずっと強くあってほしいな」という気持ちもありました。バスケのアメリカ-イタリア戦では、「お互いの練習の時間を終えて、もう試合が始まろうとしているのにアメリカチームはジャージを脱ごうとせず・・・」との解説がありました。解説者は「これがNBAの余裕なのか」みたいなことを言っていました。余裕なのか、単にいい加減なのかはわかりませんが、王者は何か違うものを持っているようです。結局、試合は93-61でアメリカが勝ったそうです。
 
 スキーや水泳には、黒人選手が出ていることが少ないですね。もしも彼らが出場するようになったら、陸上のように表彰台を独占し、新しい記録が生まれたりするのでしょうか。「赤道ギニア」という国から、水泳自由形100mの選手が出場していました。あの広いプールを3人のエントリーだったのが、2選手の棄権で偶然にも1人だけで泳ぐことになったそうです。とてもオリンピックに出るような選手とは思えないフォームで、タイムは世界記録の2倍を超える1分52秒72でした。「あと3m、あと2m、・・・」止まってしまいそうな彼を応援する声とともに、見ている私もつい力が入ってしまいました。そのときの大歓声と、もしかしたら水泳を始めたばかりかもしれない彼を見て、メダル獲得に喜ぶ選手たちとはまた違うものを感じました。

J-PRESS 2000年 10月号