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インディアン・サマー
青山

 私たちが母国語として使用している言語は、日本語です。何気なく使っている会話の中にも、日本ならではの表現が含まれています。それでは、同じような表現をする時、外国ではどのように言い表されているでしょうか。いくつか例を挙げてみましょう。
 
 まず、今の季節ですと 「小春日和」という言葉があります。これは、春ではなく、秋の日の穏やかな暖かい陽気を表した言葉です。「小春」というのは、陰暦10月頃(現在の11月)を意味します。ちょうど立冬を過ぎたころからつづく春のように暖かく、心地よい日和ということなのです。決して春に迎える日ではありません。それでは、英語で「小春日和」と同じ表現があるかどうかですが、実は、あるのです。日本と同じく、秋のある陽気な気候を指す、「インディアン・サマー」という言葉です。同じ季節を表現するのに、日本語では「春」を、英語では「夏」を使っていますね。この違いについて少し説明することにします。
 
 日本語の 「小春日和」については、前述したように、冬の初め頃にある暖かく穏やかな日が、春のような天気であることから表現されています。では、英語の「インディアン・サマー」についてはどうでしょう。インディアンと言えば、アメリカですね。アメリカの夏は、日本のように湿気が多くむし暑いということはありません。そのため、夏はとても心地よいのです。そこで、思いもよらぬいい日和に恵まれたインディアンが、厳しい冬に備え、冬支度の仕上げをするのに夏のように大忙しで働くということから「インディアン・サマー」という言葉で表現されたと言われています。
 
 次に、言語表現というよりも、言葉遊びについて、いくつか紹介します。言葉遊びで、まず出てくるのは、早口言葉(英語で"Tongue twister")ですね。この早口言葉は、発音がしにくい単語や同音などを重ねて組み合わせたものです。例えば、「東京特許許可局(とうきょうとっきょきょかきょく)」、「青巻き紙赤巻き紙黄巻き紙(あおまきがみあかまきがみきまきがみ)」、「隣の客はよく柿食う客だ(となりのきゃくはよくかきくうきゃくだ)」などがあります。どれだけ早く正確に言えるかを競う遊びなのです。それでは、英語の早口言葉("Tongue twister")にはどんなものがあるでしょう。例えば、"She sells seashells on the seashore"、また、マザーグースからは、"Peter Piper picked a peck of pickled peppers, A peck of pickled peppers Peter. …"などがあります。国によって、言い難い単語は違うようです。
 
 他にもいろいろな言語表現がありますが、それぞれの国々によって言い表し方が違います。私たち日本人には、日本語というすばらしい言語があります。日本人ならではの言葉を大切にしたいですね。

J-PRESS 1998年 11月号