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食欲の秋
豊本

 今月は食文化についての話をしましょう。秋は芸術の秋とも言われます。そのイメージで、まずはローマの貴族のエピソードです。
 
 古い時代、ローマの貴族はパーティが好きでした。特に皇帝や勢力家の貴族は1日に何回もパーティをかけもちしていました。パーティは音楽や詩の朗読を楽しみ、そしてその間、飲み食べるという宴です。
 
 パーティをかけもちするとさすがに満腹になります。では食べきれないという時、彼らはどうしたのでしょうか。
 
 (1)食事に手をつけない。
 (2)吐いてまた食べる。
 (3)持って帰る。
 
 ローマ人は美食家です。また、日本人の1食分を1コースとして、パーティでは普通3~6コースの量が出されました。「日々吐くことによって貪食する力をふるいおこす人々」という言葉が残っているそうです。つまり正解は(2)。そのための道具として水仙の球根などを薬として用いたり、鳥の羽根でノドを刺激したりしたそうです。こうなるとパーティも苦しみですね。
 
 さて、最近では缶詰の食品も多く、中には美味で高級なものもあります。この缶詰という技術は、実は美食家の国フランスで生まれました。
 
 フランス革命とそれに続く領土拡大戦争で、兵隊たちは新鮮な食糧不足による壊血病に悩まされていました。そこで1795年、ナポレオン率いる政府は、多額の賞金を懸けて「新保存法」を募ったのです。そしてその10年後、ある郊外のシェフがコルク栓の瓶を熱湯で加熱し、密封する方法を考案、翌年イギリスのデュランドという人がブリキの容器を使って完成させました。ナポレオンの意外な貢献とも言えるでしょう。
 
 ところでヨーロッパの料理も良いですが、やはり秋は和食ですね。今晩はサンマという人もいるのではないでしょうか。

J-PRESS 1997年 10月号